15歳中学生
受験生
新生児マススクリーニングで
フェニルケトン尿症と診断されている
直近の血中Phe濃度は600~1,000μmol/L
治療法は食事療法

本症例は、臨床症例の一部を紹介したもので、すべての症例が同様な結果を示すわけではありません。

息子思いで
面倒見の
いい性格

タカシくんの
クラスメート

フェニルケトン尿症
(PKU)の
食事療法と課題

フェニルケトン尿症の目標血中Phe濃度はいずれの年齢でも2~6mg/dL(120~360μmol/L)とされていま1)

目標血中濃度を達成するためには、食事療法を生涯にわたって継続すべきとされており、厳格な遵守が求められます。

しかし、思春期にかけては自立欲求や同調圧力などによって食事療法の遵守が難しいとされていま2)
Phe値のコントロールが悪化することが多い思春期に、PKU治療を見直してはいかがでしょうか。

1)日本先天代謝異常学会編:新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2019: p16,20

2)Vockley J, et al. Genet Med. 2014;16(2):188-200.

PKU治療薬
パリンジック®について

パリンジック®は、生体外の酵素であるフェニルアラニンアンモニアリアーゼを免疫原性の低減と消失半減期の延長を目的にポリエチレングリコール(PEG)化した製剤です。週1回2.5mgから開始し、徐々に漸増し、1日1回20mgを維持用量として皮下投与します。15歳以上の成人が適応となります。

パリンジック®
臨床試験について

日本で行われた臨床試3)についてご紹介します。
本試験は、パリンジック®の投与歴のない18~70歳の日本人PKU患者を対象に有効性及び安全性を評価することを目的としました。スクリーニング期の4週間で食事及び血中Phe濃度を観察した後、導入期の4週間では2.5mg、週1回投与しました。漸増期では5週間以上、ご覧の用量・回数・期間で投与しました。パート1の維持期では血中Phe濃度低下効果が得られるよう40mg/日まで漸増し、続くパート2の長期継続投与期では最大60mg/日まで漸増しました。

3)Ishige M, et al. Mol Genet Metab. 2023;140(3): epub ahead of print

有効性解析対象11例の被験者の平均血中Phe濃度は、52週時には448.3μmol/Lであり、ベースライン1,025.9μmol/Lから平均で57.5%の減少を示しました。
本試験に参加した12例のうち、症例2および症例5における血中Phe濃度はご覧のように推移しました。症例2では36週で血中Phe濃度が低下し管理目標上限の360μmol/Lを下回っています。一方、症例5では血中Phe濃度はほぼ横ばいで、136週時点では効果は表れませんでした。

パリンジック®の効果が表れるタイミングは患者さんごとに異なるため、そのことを患者さんに説明する必要があります。効果が表れない場合は40mg、60mgへの段階的な増量をご検討ください。

全被験者の医療食及び食事からのタンパク質摂取量はご覧のように推移しました。血中Phe濃度が360μmol/Lを下回った症例では食事からのタンパク質摂取量の増加が認められました。

本試験では全被験者がひとつ以上の有害事象を報告しました。最も多かった有害事象は注射部位の紅斑と腫脹で、それぞれ12例中10例、83.3%でした。その他の有害事象はご覧のとおりです。
投与中止、試験中止、死亡に至った有害事象はなく、パリンジック®によるアナフィラキシー反応は報告されませんでした。

パリンジック®
安全性について

パリンジック®は免疫原性の高さから過敏症反応の副作用に注意が必要です。
アナフィラキシーが発現することがありますので、投与開始前にアナフィラキシーの徴候・症状、それらの症状が発現した場合の対処方法などを患者さんに指導し、患者さんが理解したことを確認したうえでパリンジック®の投与を開始してください。また、パリンジック®による治療中は自己注射可能なアドレナリン注射剤を常時携帯するよう、患者さんに指導をお願いします。

  • フェニルケトン尿症(PKU)の食事療法は生涯にわたって継続すべきとされており、2~6mg/dL(120~360μmol/L)に維持することが推奨されていま1)

    1)日本先天代謝異常学会編:新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2019: p16,20

  • 思春期から成人期にかけては食事制限が困難になることが報告されていま4)

    4)Jurecki Molecular Genetics and Metabolism 120 (2017) 190–197

  • パリンジック®は日本人のPKU患者を対象に有効性及び安全性が評価されていま3)

    3)Ishige M, et al. Mol Genet Metab. 2023;140(3): epub ahead of print

  • 思春期以降における食事療法に悩まれている患者さんにとって、パリンジック®がひとつの選択肢となるのではないでしょうか