• 若手医師

    院内での採用を機に、パリンジック®について
    知りたいと考えている

  • ベテラン医師

    PKUの最新の情報にも精通している

当院でもパリンジック®が採用されたので、
有効性・安全性について改めて確認しておきたいです。

いいですよ、疑問をひとつずつ解消していきましょう。

パリンジック®の効果の程度は?

まず、パリンジック®の効果がどの程度か教えてください。

パリンジック®の有効性及び安全性を評価することを目的に、18歳以上のパリンジック®の投与歴のない日本人PKU患者12例が登録された第相非盲検の臨床試1)が参考になると思います。試験概要はご覧のとおりです。
有効性解析対象11例の被験者の血中Phe濃度はベースラインの1,025.9μmol/Lから52週時には448.3μmol/Lまで減少しました。

1)Ishige M, et al. Mol Genet Metab. 2023;140(3):107697.

平均で57.5%の減少を示したのですね。

パリンジック®による治療の効果はいつごろから現れるものでしょうか。

パリンジック®の効果は、免疫応答が成熟してから現れるため、効果が現れる時期は症例ごとに異なります。
先ほどの臨床試1)の有効性解析対象について、症例ごとに血中Phe濃度を見てみましょう。たとえば、症例2では20mgを投与中である36週あたりで血中Phe濃度が低下し、管理目標上限の360μmol/Lを下回っています。

32週時で約800μmol/Lだったのが、40週時では約0μmol/Lになっていますね。(注)

(注):血中フェニルアラニン濃度が2回以上連続して30μmol/L未満である場合、低フェニルアラニン血症と診断されます。管理目標の範囲を下回る血中フェニルアラニン濃度の場合は、食事からのタンパク摂取量の増加、および必要に応じて本剤の減量又は中止をご検討くださ2)

2)パリンジック® 電子添文.2023年5月作成(第1版).

はい。血中Phe濃度が低下してからは、食事からのタンパク質摂取量を増やすことができ、医療用食品からのタンパク質摂取量を減らしています。その後も血中Phe濃度も継続して低値を維持しています。

一方、症例5では血中Phe濃度はほぼ横ばいで、40mgを投与中である136週時点では効果はまだ現れていません。

効果が現れる時期が予測できないため、患者さんの治療モチベーションを維持しながら効果が現れるまで治療を継続することが重要なのですね。

パリンジック®の副作用マネジメントで
気を付けることは?

副作用マネジメントはどのような点に気を付ければよいのでしょうか。

過敏症反応の副作用に注意が必要なため、電子添2)を参考に、週1回2.5mgと少量から開始し、図の漸増法に従って、段階的に増量するとよいと思います。この漸増法の投与期間はあくまで目安で、副作用が出ていれば漸増を遅らせます。先ほど紹介した臨床試験では投与開始から24週ほどかけて20mg1日1回投与に漸増していった症例もいたようです。

2)パリンジック® 電子添文.2023年5月作成(第1版).

なるほど。そのほかに、過敏症を軽減させる方法はあるのでしょうか。

パリンジック®適正使用ガイ3)を参考に過敏症反応を軽減する目的で、パリンジック®投与前に抗ヒスタミン剤及び必要に応じて解熱鎮痛剤を投与することも大切です。

3)パリンジック® 適正使用ガイド(投与ガイド). 2023年5月作成.

電子添2)にはアナフィラキシーについても記載があります。どのように注意すればよいでしょうか。

パリンジック®投与中はアドレナリンを携帯してもらい、投与後少なくとも1時間はご家族にそばにいてもらうなど、緊急時の対応方法を患者さんやご家族にご説明するとよいでしょう。

先ほどの臨床試験の安全性についても確認したいです。

いいですよ。全被験者がひとつ以上の有害事象を報告しました。最も多かった有害事象は注射部位の紅斑と腫脹でそれぞれ12例中10例、83.3%でした。その他の有害事象は図のとおりでした。
医師の判断による投与中止や試験中止、死亡に至った有害事象はありませんでした。

パリンジック®は少量から開始し、抗ヒスタミン剤及び解熱鎮痛剤の前投与をすることで過敏症に注意しようと思います。また、最初のうちは頻回に来院してもらい、副作用の発現状況の確認や緊急時の説明を行いたいと思います。

パリンジック®の処方を
検討する患者像は?

パリンジック®の処方を検討できる患者さんはどのような患者さんなのでしょうか。

食事療法の遵守が困難になっている患者さんや、治療を遵守していても目標Phe濃度の達成が難しい患者さんに新しい治療選択肢として検討できる可能性があります。
また、高校生など思春期から成人期にかけては、食事療法が難しくなりま4)食事療法が緩んでPhe値が上昇すると、不注意やうつ状態などの精神症状が現れることがわかっていま5)これらの高Phe血症に関連する症状は、治療を強化・再開することで改善できるという報6,7)があります。

4)Vockley J, et al. Genet Med. 2014;16(2):188-200.

5)日本先天代謝異常学会編:新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2019: P20.

6)Burgess NM, et al. Orphanet J Rare Dis. 2021;16(1):35.

7)White DA, et al. Mol Genet Metab. 2013;110(3):213-217.

思春期以降かつ食事療法がうまくいっていない患者さんに治療選択肢のひとつとして検討したいと思います。

先生、ありがとうございました。
パリンジック®の効果・安全性などについて
理解を深めることができました。

パリンジック®の処方にあたっては、
PKUとパリンジック®について詳しく理解する
必要があります。わからないことがあれば、
いつでも相談してくださいね。