パリンジック(ペグバリアーゼ) を使っていただく先生方へ

患者さんとのコミュニケーションのポイントや、ご処方時の確認事項について説明します。

1投与頻度・投与量についてご理解いただく

パリンジッ®は漸増しながら効果を発揮する自己注射薬であることを患者さん・ご家族にお伝えください。「週1回2.5mg」から開始し、以下の漸増法に従って「1日1回20mg」まで段階的に増量しますが、患者さんの状態に応じて投与頻度や投与量を変更することがあります。

パリンジックの用法及び用量

通常、成人にはペグバリアーゼ(遺伝子組換え)として1日1回20mgを維持用量とし、皮下投与する。ただし、週1回2.5mgを開始用量として、以下の漸増法に従い、段階的に増量する。1日1回20mgを一定期間投与しても効果が不十分な場合は、40mg又は60mgに段階的に増量できるが、最大用量は60mgである。なお、患者の状態に応じて適宜増減する。

パリンジッ®電子添文2023年5月作成(第1版)

7.用法及び用量に関連する注意〈電子添文より抜粋〉

7.240mgへの増量は、1日1回20mgを原則24週間以上投与しても効果が不十分な場合に考慮することができる。患者の状態に応じて1日1回20mgを12週間以上投与しても効果が不十分な場合にも40mgへの増量を考慮することは可能であるが、その必要性については個々の患者の状態を踏まえて慎重に判断すること。60mgへの増量は、1日1回40mgを16週間以上投与しても効果が不十分な場合に考慮することができる。
一定期間投与しても十分な効果が得られない場合は、有益性と危険性を考慮して投与継続の必要性を判断すること。

2効果が出るまでの期間は個々人によって異なることについて
事前に合意形成しておく

患者さんの中には、「治療を開始すれば、すぐに食事制限をやめられる」と思う方もいらっしゃいますので、効果が期待できるまでの期間について、事前にご理解いただくことが大切です。国内第Ⅲ相試験(165-305試験)(n=12)では、血中Phe濃度及びタンパク質摂取量、本剤用量は以下のように推移しました。

試験概要・安全性を表示する

ベースラインからの血中Phe濃度の推移(個別値、その他の評価項目)

社内資料:165-305試験<承認時評価資料>

紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

血中Phe濃度、タンパク質摂取量、本剤用量の推移

Ishige M, et al. Mol Genet Metab. 2023;140(3): 107697
本試験はBioMarin Pharmaceutical Incの⽀援により実施された。
著者にBioMarin Pharmaceutical Incの社員及びBioMarin Pharmaceutical Incから講演料等を受領している者が含まれる。
<転載許諾に関する情報>http://creativecommons.org/licenses/by/4.0/ (2024年10月アクセス)

3自己注射の方法をご理解いただく

「パリンジッ®自己注射ガイドブック」を用いて、患者さん及び観察者(ご家族等)に自己注射指導を行ってください。

自己注射ガイドブック

< 内容 >

  • パリンジッ®について
  • 注射のまえに
  • 注射のしかた
  • 注射のあと
  • 副作用
  • こんなときは

Step1ご処方日までの準備

  • 医師確認書へのご署名・ご提出
  • 前投与薬(抗ヒスタミン剤、解熱鎮痛剤等)の準備
  • アドレナリン注射薬の処方登録…アドレナリン注射剤の処方には登録が必要です。

【公式】エピペンサイト
(ヴィアトリス製薬株式会社 提供)
アナフィラキシー補助治療剤 - アドレナリン自己注射薬 エピペ®注射液0.15mg/0.3mg

エピペンサイト 医療関係者用ページのご利用にあたっては会員登録が必要です。

https://www.epipen.jp/

URLまたは二次元コードからアクセスしてください。

Step2患者さん・観察者(ご家族など)への説明

  • 資料「パリンジッ®とは」「自己注射ガイドブック」を用いて、製剤説明および自己注射指導をお願いいたします。
  • アナフィラキシーに関するご説明事項

    • アナフィラキシーが発現する可能性があるため、医師に指示された抗ヒスタミン剤や解熱鎮痛剤を本剤投与開始2~3時間前を目安に前投与します。
    • アナフィラキシーの徴候・症状、それらの症状が発現した場合の対処方法等を理解した観察者が、投与後少なくとも1時間は患者の傍らで観察します。
    • アドレナリン注射剤及び患者カードを常に携帯するよう指導してください。
  • 患者さん・観察者同意書を取得してください。テンプレートはBioMarinで準備しています。

パリンジッ®とは

< 内容 >

  • フェニルケトン尿症とは?
  • フェニルケトン尿症の治療法
  • パリンジッ®とは?
  • アナフィラキシーについて
  • パリンジッ®の副作用
  • パリンジッ®で治療中の注意点
  • パリンジッ®の投与
  • フェニルケトン尿症の医療費について

患者カード

Step3投与開始

  • 医療機関において、患者さん・ご家族に「専用保冷バッグ(保冷剤付き)」、「廃棄ポーチ」を提供してください。
  • 本剤の貯法は2~8℃です。患者さん・ご家族には、専用保冷バッグを使用して医療機関から自宅へ本剤を持ち帰り、冷蔵庫で保管するよう指導してください。
  • 注射時には自己注射準備マットを使用し、注射に必要なものがそろっているか確認してください。
  • 注射後はすぐに使用済みシリンジを専用の廃棄ポーチに入れ、すべての器具を安全に廃棄できるよう指導してください。

注射に必要なもの

安定した清潔なテーブルに専用マットを置き、その上に必要なものを並べます。

投与後の観察について

維持用量に達するまでの間は、食事からのフェニルアラニン摂取量を一定に保つよう管理し、月1回以上の頻度で血中Phe濃度を測定し、過敏症反応の発現等の患者さんの状態に留意して慎重に漸増してください。

ご担当されているPKU患者さんの中にも、
治療を必要とされる患者さんが
いらっしゃるかもしれません。
パリンジッ®の処方をご検討される際は、
MM/MRにご相談ください。

国内第Ⅲ相試験(165-305試験)

試験概要

目的
本剤の投与歴のない18~70歳の日本人PKU患者を対象に、導入/漸増/維持投与レジメンで本剤を自己注射したときの有効性及び安全性を評価する
試験デザイン
非盲検、多施設共同
対象
本剤の投与歴のない18~70歳の日本人PKU患者 a:12例
a:血中Phe濃度600µmol/L超
試験方法

パート1
本剤20mgの1日1回投与を24週間以上行っても血中Phe濃度が360µmol/Lを超えている場合は、40mgに増量可能とされた。また、本剤投与の約2~3時間前にヒスタミンH1及びH2受容体拮抗薬並びに必要に応じて解熱鎮痛剤の前投与が行われた。

パート2
血中Phe濃度低下の有効性が得られるまで最大60mg/日まで増量可とし、血中Phe濃度が360µmol/L以下となった後は食事からのタンパク質摂取量の調整を可とした。

評価項目

<有効性>
主要評価項目:
ベースラインから52週時までの血中Phe濃度の変化量及び変化率
その他の評価項目:
・ ベースラインからの血中Phe濃度の変化量及び変化率の推移 等
探索的評価項目:
・ 医療食及び食事からのタンパク質摂取量の変化 等

<安全性>
有害事象、臨床検査、バイタルサイン 等

<免疫原性>
ADA陽性割合及び抗体価、有効性及び安全性との関係 等

解析計画

<解析対象集団>
本剤投与を52週間完了し、52週時の血中Phe濃度の測定値が得られた集団を52週時有効性解析対象集団、本剤の投与を少なくとも1回受けたすべての患者を安全性解析対象集団とした。

<有効性解析>
主要解析は要約統計量を用いて要約し、52週時の血中Phe濃度の平均変化量の95%CIは対応のあるt検定を用いて算出した。
その他の解析は、パート1の52週時までの各評価時点の血中Phe濃度は要約統計量を用いて要約し、また血中Phe濃度のベースラインからの変化量及び変化率を示した。血中Phe濃度が20%以上低下、並びに600µmol/L以下、360µmol/L以下、120µmol/L以下及び30µmol/L未満に低下した患者の割合を要約した。血中Phe濃度が初めて600µmol/L以下に低下するまでの期間をカプランマイヤー生存曲線手法を用いて示した。
探索的解析は、要約統計量を用いて要約した。
ベースラインの食事からのタンパク質摂取量はスクリーニング期間中(Day 1を含む)の食事からのタンパク質摂取量の平均値を基準とし、各評価時点及び試験全体での食事からのタンパク質摂取量がベースラインと同じ水準であった患者の割合を求めた。ベースラインと同じ水準とは、食事及び医療食からのタンパク質摂取量の変化量がいずれもベースラインから10%未満の場合と定義した。

社内資料:165-305試験<承認時評価資料>

安全性

安全性(52週時)

  • 副作用は全体で12例(100.0%)、10mg/日未満で11/12例(91.7%)、10~20mg/日未満で12/12例(100.0%)、20~40mg/日未満で9/12例(75.0%)、40~60mg/日未満で2/7例(28.6%)に認められました。
  • 主な副作用(発現率40%以上)は、注射部位紅斑及び注射部位腫脹各10例(83.3%)、関節痛9例(75.0%)、注射部位そう痒感及び倦怠感各6例(50.0%)、注射部位疼痛、アレルギー性皮膚炎、蕁麻疹、補体成分C3減少及び補体成分C4減少各5例(41.7%)でした。
  • 重篤な副作用、投与中止に至った副作用及び死亡例は認められませんでした。
  • なお、本剤投与の約2~3時間前にヒスタミンH1及びH2受容体拮抗薬並びに解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン・ロキソプロフェン)が全例に前投与されました。

社内資料:165-305試験<承認時評価資料>

安全性(144週時)

Ishige M, et al. Mol Genet Metab. 2023;140(3): 107697
<転載許諾に関する情報>http://creativecommons.org/licenses/by/4.0/(2024年10月アクセス)