1. ムコ多糖症と類似する疾患の特徴および画像
1. 先天性脊椎骨端異形成症(Spondyloepiphyseal dysplasia congenita)
身長:体幹短縮型低身長の代表疾患である。乳児期には四肢の短縮も目立つが、手足の小ささは目立たない。
成人の身長には幅がある。
整形外科的臨床所見:短頚、樽状胸郭がみられ、膝関節変形[内反(A、B)または外反]、時に内反足を合併する。
特異顔貌および眼・耳などの合併症など:顔面中央部は低形成で、時に口蓋裂を合併する。近視や網膜剥離(主に思春期)などを合併しやすい。知的発達は正常である。
特徴的な画像所見:脊柱側弯症、歯突起形成不全などの脊柱異常がみられる。大腿骨頭骨端核の骨化は遅延し、内反股を呈する(B)。乳幼児期の脊椎は椎体前縁が丸く小さい(西洋梨型)が(C)、成人では扁平椎、終板は不整となる。腰椎前弯の増強がある。
A. 背面像(6歳、女):内反膝を伴った体幹短縮型低身長。
B. 両下肢正面像(6歳、女):著明な内反膝および、大腿骨頭骨端核や膝周囲の骨端核の骨化遅延を認める。
C. 脊椎側面像(2歳、女):椎体前縁が後縁より高い扁平椎が乳幼児期には特徴的である。
ムコ多糖症と鑑別する上で重要な診断のポイント
ムコ多糖症ⅣA型モルキオ症候群と体型が類似する。X線所見では、モルキオ症候群では外反股を、本症は内反股を呈することが多い。モルキオ症候群では関節可動域の拡大、短指が目立つ。最終的には尿中ムコ多糖分析・酵素活性分析、遺伝子検査などで鑑別する。
2. Kniest骨異形成症(Kniest dysplasia)
身長:体幹短縮型低身長(100~135cm)を呈し、四肢短縮は近位肢節で目立つ。
整形外科的臨床所見:樽状胸郭、下肢および脊柱変形、進行性の関節拘縮がみられる。早発性の変形性関節症を生じる。
特異顔貌および眼・耳などの合併症など:顔面中央低形成、上顎低形成がみられる。近視、網膜剥離、白内障、水晶体脱臼・亜脱臼、口蓋裂、難聴などを合併する。
特徴的な画像所見:幼児期に胸腰椎移行部に冠状裂(coronal cleft)を認める。脊椎は前後・左右径が拡大した扁平椎が特徴的で後側弯変形をきたす(A、B)。小児期には大腿骨頭の骨化は遅延し、成人では関節は腫大する(C)。長管骨のダンベル状変形が特徴的である。
A、B. 頚髄、腰髄MRIT2強調矢状断像(35歳、女):前後径が増大した扁平椎と脊柱管狭窄を認める。
C. 両股関節正面像(22歳、女):大腿骨頭の肥大と内反股を認める。
ムコ多糖症と鑑別する上で重要な診断のポイント
関節拘縮と眼の症状が出やすいところが類似する。椎体の冠状裂とダンベル状長管骨が特徴で、内反股を伴う点もムコ多糖症との鑑別に有用である。
3. Stickler症候群(Stickler syndrome)
身長:軽度の低身長もしくは正常範囲。時に、高身長がみられる。
整形外科的臨床所見:関節の過可動性が小児期にみられる。早発性の変形性関節症が生じる。脊椎は側弯、後弯を生じて、成人期の腰痛有訴率が高くなる。
特異顔貌および眼・耳などの合併症など:小児期には小顎と顔面中央低形成が目立つ。口蓋裂は25%でみられる。近視、網膜剥離、先天性白内障などを合併しやすい。難聴は年齢とともに増加する。知的発達は正常である。
特徴的な画像所見:軽度から中等度の扁平椎、後弯、側弯、終板不整、Schmorl結節などの脊椎異常を認める(A)。
四肢長管骨では骨幹端部の広がり(metaphyseal flaring)がみられ、関節は腫大する(B)。
A. 腰椎側面像(5歳、男):軽度の扁平椎と終板不整。
B. 両下肢正面像(5歳、男):骨幹端部の広がり(metaphyseal flaring)と関節腫大を認める。
ムコ多糖症と鑑別する上で重要な診断のポイント
関節所見と眼の症状が出やすいところが類似する。
特徴的な顔貌と軽度の椎体変形、正常な骨盤などが、ムコ多糖症と異なる。
4. 変容性骨異形成症(Metatropic dysplasia)
身長:出生時には四肢短縮型低身長であるが、成長とともに脊柱変形(後側弯)が進行して体幹短縮型に変化する。
整形外科的臨床所見:ベル状の狭小胸郭で、胸郭不全症候群を併発して新生児期に致死性になることがある。
四肢大関節の拘縮と腫大、進行性の脊柱変形、環軸椎亜脱臼などを生じる。
特異顔貌および眼・耳などの合併症など:顔面中央部の低形成と前額部の突出がみられる。尾部の皮膚性隆起がある。
特徴的な画像所見:脊椎は扁平椎と進行性の後側弯がみられる(A)。
長管骨は短縮し、骨幹端部の幅が拡大したダンベル状変形が特徴的(B)。
A. 脊椎側面像(2歳、男):重症例。著明な扁平椎と後弯変形を認める。
B. 両下肢正面像(2歳、男):重症例。ダンベル状の下肢長管骨。
AとBは同じ症例。
ムコ多糖症と鑑別する上で重要な診断のポイント
関節拘縮と体型が類似する。進行性の脊柱変形による体幹短縮への変化が特徴である。関節弛緩を示すモルキオ症候群とは異なる。
5. 脊椎骨幹端異形成症 Kozlowski型
(Spondylometaphyseal dysplasia Kozlowski:SMDK)
身長:体幹短縮型低身長を認める。
整形外科的臨床所見:四肢関節の拘縮と腫大、脊柱変形、下肢変形(外/内反膝)、樽状胸郭などが特徴的である。
特異顔貌および眼・耳などの合併症など:正常顔貌で、眼や耳の合併症も少ない。
特徴的な画像所見:扁平椎の程度は強く、前後径、左右径ともに増大する(A)。
長管骨骨幹端部は広がり(flaring)、関節面の不整を認める(B)。
A. 脊椎側面像(小児期、男、Kozlowski型):前後径が拡大した著明な扁平椎を認める。
B. 両膝正面像(21歳、男、Kozlowski型):関節の腫大と関節面の不整を認める。
ムコ多糖症と鑑別する上で重要な診断のポイント
関節拘縮と体型が類似する。正常顔貌で眼や耳の合併症が少ない点がムコ多糖症とは異なる。
6. 偽性軟骨無形成症(Pseudoachondroplasia)
身長:出生時には正常身長だが、歩行開始頃から四肢短縮型低身長になる。
整形外科的臨床所見:短指で顕著な外/内反膝がみられる。肘関節屈曲拘縮(伸展制限)以外は関節弛緩性が強い。
特異顔貌および眼・耳などの合併症など:顔貌は正常で、waddling gait(動揺性歩行)がみられる。骨格系以外の合併症は少ない。
特徴的な画像所見:腰椎の前弯がみられる。扁平椎で椎体の前方舌状突出像(anterior tongue)が特徴的である(A)。
手指の短管骨は著しく短く、指節骨が弾丸状(bullet shaped)である。長管骨では骨端が小さく、骨幹端は幅が広い(B)。
A. 脊椎側面像(2歳5カ月、女):椎体前方の舌状突出を伴った扁平椎が特徴的である。
B. 両下肢正面像(2歳5カ月、女):骨端は小さく、骨幹端は幅が広い。
AとBは同じ症例。
ムコ多糖症と鑑別する上で重要な診断のポイント
椎体前方の舌状突出はモルキオ症候群に類似する。
四肢短縮型低身長であること、顔貌正常で骨格系以外の合併症が少ないことなどがムコ多糖症とは異なる。
7. Dyggve-Melchior-Clausen異形成症(Dyggve-Melchior-Clausen dysplasia)
身長:1歳頃から体幹短縮型低身長となり、最終身長は100~130cm程度になる。
整形外科的臨床所見:樽状胸郭、脊柱変形、関節拘縮、外反膝、股関節亜脱臼、環軸椎亜脱臼などを認めやすい。
特異顔貌および眼・耳などの合併症など:小頭で粗な顔貌を呈し、短頚である。中等度から重度の知的障害を伴う。動揺性歩行がみられる。
特徴的な画像所見:腸骨稜の不規則なレース様所見(lace-like appearance)が特徴的である(A)。脊椎は中等度の扁平椎を呈し、側面像ではひょうたん状の椎体変形(double hump)を認める(B)。長管骨では骨端異形成が著明で、特に大腿骨頭の骨化は遅延する。
Alquraishi AS, et al. Cureus. 2025; 17 (2): e78881.
(https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/)
A. 両股関節正面像(8歳、男):腸骨稜のレース様所見と大腿骨頚部の短縮を認める。
B. 脊椎側面像(8歳、男):double hump変形を伴った扁平椎。
ムコ多糖症と鑑別する上で重要な診断のポイント
ムコ多糖症ⅣA型モルキオ症候群と身体的特徴や単純X線所見で類似する点が多い。知的障害を伴う点がモルキオ症候群と異なる。
8. 遅発性脊椎骨端異形成症、X連鎖(SED tarda, X-linked)
身長:X連鎖性潜性(劣性)遺伝で、男児に発症する疾患。学童期以降に体幹短縮型低身長を呈するが、程度は軽い。
整形外科的臨床所見:樽状胸郭で、側弯や後弯、変形性股関節症や変形性脊椎症がみられる。
特異顔貌および眼・耳などの合併症など:顔貌は正常で精神発達遅滞はない。
特徴的な画像所見:小児期には椎体後部の軽度の膨隆や椎体前後径の増大がみられる。学童期は椎体後方部分の上下縁が隆起した(posterior hump)フタコブラクダ様椎体が特徴的である(A)。大腿骨骨頭骨端核の異形成を示す。
ムコ多糖症と鑑別する上で重要な診断のポイント
発症時期とposterior humpが特徴的であり、顔貌が正常で骨格系以外の合併症が少ないことなどがムコ多糖症とは異なる。
9. 関節弛緩を伴う脊椎骨端骨幹端異形成症(SEMD with joint laxity)
身長:低身長と著しい関節弛緩・脱臼が特徴である。
整形外科的臨床所見/特異顔貌および眼・耳などの合併症など:特異顔貌(卵型で平坦な顔、青色強膜、眼球突出など)を呈する。皮膚は柔らかく、筋緊張は低下する。進行性の脊柱変形があり(A)、下肢アライメント異常を呈することがある(B)。
特徴的な画像所見:扁平椎、腸骨低形成、軽度の骨幹端flaringが乳児期にみられる。橈骨頭亜脱臼も多くみられる。
年長児では骨端変形を認めることがある。
A. 全脊柱正面像(11歳、女):著明な脊柱側弯を認める。
B. 両下肢正面像(7歳、女):軽度の外反膝と骨端不整を認める。
ムコ多糖症と鑑別する上で重要な診断のポイント
ムコ多糖症ⅣA型モルキオ症候群と同様に関節弛緩がみられるが、程度は強い。また、顔貌が特徴的で進行性の脊柱変形が目立つ。
10. 多発性骨端異形成症(Multiple epiphyseal dysplasia:MED)
身長:均衡型の低身長を呈するが、低身長の程度は-3SD~正常までと様々である。顔貌と知能は正常である。
整形外科的臨床所見:下肢変形(外/内反膝)、早発性の変形性関節症がみられることがある。
特徴的な画像所見:長管骨骨端部の骨化遅延、扁平化、不整像などを特徴とする(A、B)。脊椎は異常がないことが多いが、椎体終板に軽度の不整像を示すものもある。
SD:標準偏差
A. 両股関節正面像(5歳、男):大腿骨頭の異形成が目立つ。
B. 両下肢正面像(5歳、男):長管骨骨端の扁平化と不整像がある。
ムコ多糖症と鑑別する上で重要な診断のポイント
低身長の程度が軽く、顔貌も正常であり、ムコ多糖症の軽症例との類似点がある。椎体終板の不整がみられることがあるが、脊椎はほぼ正常である点が異なる。
11. 両側ペルテス病(Legg-Calvé-Perthes disease)
通常、3~12歳の間に発症し、5~7歳での発症率が最も高い。
罹患症例の10~20%は両側性。両側性に発症する場合、通常は左右非対称で、異なる病期に発見される(A)。
跛行がみられる。股関節の可動域制限がみられ、股関節や大腿部、膝などに痛みが生じる。
特徴的な画像所見:初期には関節腔の拡大、大腿骨頭骨端部の骨硬化(B)、前外側の軟骨下骨折線(Crescent sign)を認める。後期は大腿骨頭の扁平化、分節化(A)などがみられる。
A. 両股関節正面像(年齢・性別不明):右は初期、左は進行期のペルテス病。
B. 両股関節正面像(年齢・性別不明):ペルテス病同時期発症例。
ムコ多糖症と鑑別する上で重要な診断のポイント
大腿骨頭の変形はムコ多糖症の軽症例と類似するが、脊椎など他の部位に異常がない点が異なる。